今回はベッキーさんのホロスコープを予定していましたが、またもや予定を変えて、
「ある犯罪者」のものをお届けします。
太陽に魚座を持つ人をなんとなく探していて、目に付いてしまったのです。
とてもとても強烈なホロスコープです。
ティル先生は著書の中で、一定の状態を定義した「〇〇のホロスコープというものは存在しない」と言っています。
(教師のホロスコープとか政治家のホロスコープとか)
この象徴があったら**に違いないとか、この配置は絶対××とか、そんな単純に決め付けられるものではない。
重要なのは、その人がホロスコープの中の象徴をどのように使ったか?ということです。
たとえば
「お金」は使い方次第では人を助けもすれば、苦しめもします。
「火」は食材を調理し、身体を温め、明かりを灯しますが、火傷をしたり火事になったり、人を殺傷することもあります。
何か問題が起きたとしても、それはお金や火が悪いのではなく、使い方が悪いのだという事は誰でも知っています。
それと同じで、ホロスコープの中の象徴も美しい形で表現されることもあれば、残念な形で表現されることもあるのです。
ホロスコープの中の象徴はあくまでも「可能性」なのです。
この男性は1955年3月2日の午前3時34分に熊本県の八代市で生まれました。
太陽は魚座、月は双子座です。
双子座の月の欲求は、聡明で賢くありたい、というものです。
頭の回転が速く、細かいところに気が付き、才気煥発でいたい。
この欲求を、感じて理解する奉仕的なエネルギーを使って表現していく、というのが基本スタイルになります。
どんな人が思い浮かぶでしょうか?
あちこちに目が届き、気が利いて、頼りになりそうな感じがしませんか?
そんな気のよさそうな質を持った人がどうして犯罪者になったのでしょう。
この男性のチャートでとても目立つのがMC上の海王星とそれに対を成すようなIC上の火星です。
そして天王星と金星のオポジション。
この2本の直線は90度で交差しています。
こういう配置をグランドクロスといいます。
グランドクロスには3つのパターンがあり、それぞれにはテーマがあります。
この場合はアンギュラーハウス(1-4-7-10)のグランドクロスですね。
(ちなみにあと2つはサクシーデント(2-5-8-11)愛や価値のやり取り、ケーデント(3-6-9-12)考え方を変える必要性、になります)
アンギュラーハウスのテーマは、
初期家庭の環境や親との関係に由来する、
自己像(1ハウス)や自己の内面(4ハウス)、人間関係(7ハウス)、仕事への関わり方(10ハウス)への影響をどのように昇華していくか。
ということになります。
子供の頃の困難な環境に負けてしまって、挫折してしまうのか、
努力して自分を見つめて成長し、強い自己像と心の自由を手に入れるのか。
なかなか厳しいお題です。
まず、彼の前提としてこういった魂のチャレンジともいえるような課題があります。
また、静止の土星と冥王星のスクエア(非常に強い抑圧と制限)
同じく土星とスクエアの水星(非常に深い考え→うつ的思考)
MC上の海王星は太陽を支配しています。
その太陽は冥王星から執着とも言えるほどの非常に強い力を受けています。(クインデチレ165度)
冥王星と太陽のハードアスペクトは、環境から抑圧を受けることで、強烈な不満を抱えながら育っていく可能性があることを物語っています。
海王星は理想やビジョン、あるいは困惑、見た目とは違う何かだったりもします。
この海王星が理想やビジョンを表すのか、困惑や見かけとは違う何かを表すのか。
または理想やビジョンを語りながら、実際は見掛けとは違うものであったりするのか。
ここがこの人物のポイントになってくるのかもしれません。
MC上にあるので、これが社会に向けての彼の仕事として現れるのかもしれません。
そして海王星と火星のハードアスペクトはカリスマ性を示すものであったりもします。
MC上にあるので非常に強力です。
太陽は2ハウスに在住。
彼の太陽のテーマは自己価値と財産です。
ここに強烈な抑圧とともに執着を持っているのですね。
太陽と月はスクエアになっています。
賢い人でいたい欲求は、奉仕的なエネルギーを纏ってどのように表面化するでしょうか。
自分の賢さで人に奉仕する、、とすれば、「人に教える、指導する」という方向に向かっても不思議はありません。
そして、太陽と月のミッドポイントには件の海王星があります。
海王星は宗教も表します。
月のハウスは5ハウス。
創造性の発揮や、教えること、仕事においての劇的な表現、自己顕示欲を満足させられるステージの必要性。
MCを支配する金星は5ハウスも支配しているので、強調されています。
このホロスコープの持ち主は麻原彰晃(松本智津夫)死刑囚です。
智津夫は貧しい家庭の7人兄弟の6番目に生まれました。
11歳年上の長兄は全盲なのだそうです。
智津夫もまた、先天性緑内障で左目は見えなかったそうです。
それでも右目は少しだけ見えていたので、普通の小学校に入学しました。
ところが、2学期になった頃、寄宿制の盲学校に無理やり転校させられてしまいます。
長兄は全盲で、すでにその学校を卒業していたのですが、なぜ弱視とはいえ片目が見えている彼が転校させられたのでしょう。
それは、就学奨励金目当てであったと言われています。
子供がそのような特殊な学校に行くと、親にお金が降りるのですね。それが目的だったと。
彼の家は「土間にムシロを敷いて」生活するほど貧しかったのだそうです。
泣いて嫌がる彼を無理やり転校させたのは、口減らしでもあったのでしょう。
とはいえ、7歳の子供です。
この事で彼は深く傷付き、「親に捨てられた」という認識を持ってしまったようです。
この歳で親から引き離され、ひとりで生きていかなくてはならなかった。
まだ物事の良し悪しも分からない年齢です。
実際、彼の「価値観」はかなり歪んだ形に育っていきました。
小学5年生のときに生徒会長に立候補していますが、
一部の生徒からおやつを奪い取り、それを賄賂としてばら撒いたのが災いして落選してしまいます。
この時「落選したのは、先生が票にインチキをしたからだ」と言って抗議したそうです。
幼くして親元から離された彼が独自に身につけた処世術は、あまりにも幼稚で人の気持ちを無視したものでした。
全盲の子が多い中、片目が見える智津夫は体格もよく勉強もできて、目立っていたそうです。
彼は体力や威圧的な態度を使うことで、人をコントロールする術を自然に身に着けてしまったのかもしれません。
先生が「なんでそんなことをしたの?」と聞くと、
「僕には人得がない」と言って泣いたそうです。
彼は自分が好かれていないことを、知っていた。
でもどうしたら好かれるのかも、分からなかった。
なぜなら、大切な存在として扱われたことがなかったから、、、
その後、中等部でも高等部でも生徒会長に立候補しますが、一度も当選したことはありませんでした。
日常的には力で人を従わせことができても、心まで従わせることはできなかったのです。
生徒会長に立候補したのは、実は自己顕示欲を満たすため。
しかし、彼はその事についてきちんと考えたりはしなかったのだと思います。
そして「人との信頼関係を築く」という概念が抜け落ちたまま卒業を迎えることになります。
眼科の医師になろうと志しますが、視覚障害者なのでそれは許されず、盲学校の専攻科に進み鍼灸師の資格をとります。
1975年3月、智津夫が20歳になったころです。
チャートに戻ります。
かなり緩めなのですが、風のグランドトライン(月、水星、海王星)があります。(青のライン)
これは知性化による閉回路です。
風星座(双子、天秤、水瓶)の特徴は知性です。
彼の場合、ここに根源的欲求を示す月が含まれているし、MC上の海王星もあるので、深い意味を含んでいると私は考えます。
信頼できるのは自分の知性だけ。
批判や悪口など気にしない。
ゴチャゴチャ言う奴はみんな無視。
風のグランドトラインはこんな形になりやすい危険も孕んでいます。
人の批判をものともせず、自分の道を突き進む必要があるときには大きな助けになりますが、
これも行き過ぎると、とんでもない独りよがりの方向に進んでしまいかねないのです。
この閉回路に干渉できるのは
海王星にオポジションの火星と(カリスマ性)と
水星にスクエアの土星(うつ的思考)
そして月とスクエアの太陽(抑圧された自我と自己価値への執着)
です。
おそらく彼はこの回路の中でグルグルと思考を巡らせて、誰の意見も聞かず、自分にとって都合のよい自己防衛的な方向へと進んでしまったのではないかと推測します。
彼はオウム発足前にも保険の不正請求をして追徴されたり、インチキな漢方薬を高額で売りつけて荒稼ぎをし、略式起訴を受けたりしています。
27歳になる頃には立派な詐欺師になっていたということです。
非常にタイト(同度数)で興味深いミッドポイントに水星=太陽/木星というものがあります。
ザックリ直訳すると、コミュニケーション=自我+信念、
自我と信念を持ったコミュニケーション、、自己アピールがものすごく上手いのです。
彼が何か言うと、その気になってしまう人は後を絶たない。
他にもほぼ同じ意味合いの火星=水星/木星というのもあります。
強力なセルフプロモーションの才能。
この類まれな才能を、彼は悪用したのですね。
閉回路はもうひとつあります。(ピンクのライン)
これもかなり緩めですが、太陽を含んでいるので考慮に入れます。
内容は、太陽、天王星と木星(共に逆行)、そして静止状態の土星。
水のグランドトライン(感情の閉回路)です。
感情の閉回路の負の行き着く先は「傷付きたくないから自ら関係を絶つ」という場所です。
これもまたなかなか厳しい取り合わせです。
静止状態の土星はより強力な影響を及ぼすと言われています。
あまり頻繁にあるものではなく、私も初めて見ました。
この土星は10ハウス(仕事)にあり、アセンダントを支配。(仕事=自分)
太陽は自己価値に執着していて、8ハウスを支配。(オカルトへの傾倒)
天王星木星はともに逆行しています。(反社会的、独特の信念)
これでもか、というほどに厳しい配置が続きます。
人々の心を操り、莫大な金を手にし、「尊師」と呼ばれて崇め奉られても、内面は鬱々として孤独と不安に苛まれていたのではないでしょうか。
しかし、
別の可能性はなかったのでしょうか。
MCは天秤座なので、仕事に関する欲求は金星的な美意識を追及するものであったはずです。
事実、彼は鍼灸師時代に「治療して治った人がまた具合が悪くなっている」という事実に直面して、なぜだろうと考え、その回答を得るためにヨガや神智学や仙術の勉強を始めた、ということです。
このようなプロセスはスピリチュアルな治療をする人たちにはよくある事です。
あるいは、生まれた時代がもっと遅ければ別の健全な形になっていたでしょうか。
あるいは、子供時代に彼の歪んだ「価値観」を親身になって叱ってくれる人がいたら、どうだったでしょう。
あるいは、ご両親がわずかな就学奨励金などに惑わされず、彼を手元に置いて育てていたなら。
持って生まれた「カリスマ性」や「プロデュースの才能」をもっと平和的な方向で生かす方法はなかったのでしょうか。
彼の世界にいたのは彼だけだった。
彼は自分を活かそうと努力をした。
しかし全ての思考は、自分の中だけで作り上げた「都合のよい真実」に帰り着いてしまったのかもしれません。
彼は、
自分の不幸な生い立ちに復讐しようとしたのではないか?
自分の存在を軽く扱った、両親を初めとする全ての人と社会に対して恨みを晴らそうとしたのではないか?
これほどのポテンシャルを持ちながら、方向を間違ってしまったのは残念なことです。
海王星に支配される太陽が8ハウスを支配すことから、カリスマ治療師になる可能性、
海王星と金星、5ハウスの月などから、芸術家として大成する可能性だってあったはずなのです。
1995年に逮捕後の彼を取り調べた検事、宇井稔さん(2015年に死去)は、
「麻原はよくしゃべる奴だった」と語っています。
「壁抜けができる」と言うので、「じゃあ、抜けてみせてよ」なんて会話をしたそうです。
すると麻原は「今は拘束されていてストレスがあるからできない」と答えたそうです。
「鹿児島のかるかん饅頭が食べたいなあ。とても美味しいから、検事さんもぜひ食べてみて」とか、事件以外のことはよく話していた。
そのとき宇井さんは「じゃあ、壁抜けして食べてきたらいいじゃない」と答えたそうです。
宇井さんによると、麻原は宇井さんとのおしゃべりの中で次第に心を開いていき、もう少しで本心を言いそうになったこともあったのだそうです。
ただ、その瞬間ににハッと気付いて急に押し黙り、それ以来何も語らなくなってしまったということです。
麻原にとって「心を打ち明けること=敗北」だったのかもしれません。
彼の引き起こした諸々の事件は本当に身の毛がよだつようなものばかりだった。
こうやって書くためにいろいろ調べていて、私は気分が悪くなりました。
彼の(魂の)アンギュラーハウスのチャレンジは失敗に終わりました。
でももし、
もう少しだけでも「人間らしさ」の中で彼が過ごせていたなら、
宇井さんとの会話のような、おしゃべりで気のいい彼が存在したのかもしれません。
3月20日は「地下鉄サリン事件」が起きた日です。
もともと「ポア」とは魂の救済のことなのだそうです。
麻原はそれを曲解して多くの人を支配し、搾取し、苦しめ、殺傷しました。
しかし、本当に共済されるべき人間は彼自身でした。
大切にされた経験のない彼にとって、救済とは「死ぬこと」だったのかも知れません。
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今回はすごく重い話しになってしまいました。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
もうすぐ春分ですね!
フレッシュな牡羊座の季節です。
アリエス~~♪
っていうドラマがありましたね。(歳がバレる?)
というわけで次回は
「牡羊座、1ハウス、火星」というテーマでお届けします!!
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